概要
前回より、 YouTube と Twitter (現 X) の著作権の問題について調査した内容について話している。
一連の記事は、以下のような構成になっている。
- 調査(1):結論
- 調査(2):YouTube の利用規約を読む
- 調査(3):Twitter (現 X) の利用規約を読む
- 調査(4):概略図
- 調査(5):著作権の例外
- 調査(6):二次著作物
- 調査(7):編集後記
著者は専門家でも何でもないので注意。 内容の正確性は保証しない。
用語
今までの話を図示してみよう。
ただし、以下のような用語を使う。
- 「サービス」: YouTube / Twitter (現 X) のこと。
- 「サービス機能」:
- 「L.」: 「ライセンス」というのも長いので、その省略。
- ライセンス中の「L. 付与」とは「ライセンス付与」を意味する。
概略図
では、図の左から見ていこう。
まず、当たり前のこととして、コンテンツ作成者は著作権を持っている。 この著作権を 2つに分割して考える。 一方は、「サービス機能」で利用される (ことが想定される) 権利で、 もう一方は、それ以外の権利だ。
次に、コンテンツ作成者は、ユーザーとしてサービスを利用する。 このとき、コンテンツ作成者は、そのサービスの利用規約に従う必要がある。 そして、先述の通り、ユーザーはサービスに対して、 コンテンツを利用しても良いというライセンスを付与しなければならない。
このライセンスに従って、サービスは著作者のコンテンツを無許可で利用できるようになる。 また、その利用許可を他の人に与える権利も持つ。 そして、サービスは、他のユーザーに対して、 サービス機能を通じて使用する場合のみ、 コンテンツを利用してもいいというライセンスを付与する。
他ユーザーは、付与されたライセンスに従い、 サービス機能を通じて使用する場合には、コンテンツを利用する上で許可は不要ということになる。 具体的には、動画やポストの埋め込みをしてもいい、ということだ。
一方、その他の利用についてはライセンス付与の対象外だ。 なので、許可が必要となる。 スクショや転載、動画やポストでないコンテンツの利用等は許可が要る。
以上が、各サービスの規約に基づいた、 「埋め込み OK」「それ以外は NG」の流れであり、 図はそれを示したものだ。 *1
概略図 (著作権違反の場合)
次に、著作権侵害の場合についても確認しておこう。
判例を紹介する Web サイト *2 によると、 「著作権侵害をしているユーザーのポスト」に対して、 関係ない第三者がリポストした場合、 その第三者まで著作権侵害になるというケースがあったとのことだ。 それについても確認していく。
例によって、図の左から見ていく。
最初には、先程と同様、コンテンツ作成者がいる。 その人はコンテンツを作成した人で、当然ながら著作権を持っている。 また、場合によってはそのコンテンツの利用規約も提供しているかもしれない。 *3
その人は直接サービスを利用していない。 あるいは、していたとしても、 YouTube や Twitter (現 X) 等のサービスにコンテンツをアップロードしたりはしてない。
そこに、「コンテンツ無断使用者」が現れる。 読んで字の如く、勝手にコンテンツを使う人だ。 単にコンテンツをダウンロードするだけならまだしも、 無許可でコンテンツをサービスにアップロードする。
こうした行為は、著作権的に言えば、複製権や公衆送信権に違反している。 また、「無断」ということは、当然著作者から許可されてもいない。 当然ながら、明白な犯罪行為である。
そこまでは良い。だが、その後の展開はどうなるだろうか?
規約によって「サービスはユーザーに対してライセンスを付与する」と言ったが、 そもそもコンテンツ無断使用者には付与できるライセンスなどないため、 サービスも他ユーザーに対して付与できるライセンスを受け取れていない。
一方で、サービスは、コンテンツが無断複製されたか否かに関わらず、 それを (通常のコンテンツと同じように) 公開する。 このとき、規約上は、サービスが他ユーザーにライセンスを付与することになっている。 そして、規約に従えば、サービス機能を使用する限りは、他ユーザーもコンテンツを無許可で使って良いはずだ。
だが、サービスはコンテンツ無断使用者からライセンスをもらっていないのだから、 当然ながら付与できるライセンスなど持っていない。 したがって、他ユーザーもそのコンテンツを利用するためのライセンスを付与されていない、ということになる。
ライセンスがないのだから、 元々のコンテンツ作成者に許可を取らずにコンテンツを利用すれば (図中の赤矢印)、 例えサービス経由でコンテンツを利用しようともアウトである。つまり、許可が必要になる。
- 「そんなの理不尽だ」とか、
- 「悪いのは無断でアップロードした人だけでしょ」とか、
- 「そもそもライセンスが有効かどうか判断してないサービスが悪いんでしょ」とか、
- 「無断使用コンテンツを他の普通のコンテンツと同じように見せかけて誤解させるなんて悪質だ」とか、
そういう声が聴こえてきそうである。
しかし、先の記事調査で述べたように、サービスは無断使用の責任は一切取らないと規約で決まっている。 これは YouTube でも Twitter (現 X) でも 変わらない。
加えて、この 「無断使用」 とは、無断でアップロードすることだけでなく、 上述の通り、無断でダウンロードしたり、それを使ったりする行為にも及ぶ。
そして、規約によれば、その責任は、著作権に違反した人 (ダウンロードした人) が負うことになっている。 あえて言うなら、「無断でアップロードされたものを、確認する義務を怠った」と判断されるのである。
その義務を怠ったばかりに、違法行為に直接関係がなさそうに見える第三者でも、 著作権違反と判断されてしまうのだ。
結論
概略図で権利の流れを整理していった結果、
- ユーザーは、著作者の一部権利の譲渡と、規約に従った、限られたライセンスしか認められていない。
- 許可なく公開されているコンテンツを、ちゃんと調べずに使うと、サービス機能を利用していても著作権違反になりうる。
ということが明白になった。
なので、「サービス機能経由なら OK」と安易に考えられない。
例えば、販売されている小説の抜粋や漫画の切り抜き等なら、 注意すべきという意識が働きやすいかもしれない。 *4
しかし、一般人が共有サイトで投稿しているような小説の抜粋・イラスト・動画等はどうだろうか。 他の人がそれを埋め込んでいたとしても (何ならリプライするだけでも)、 先の議論によれば、きちんとコンテンツの出どころや、その規約等々を確認しなければならない。 規約も何もなく、本人に確認もせずに使ったなら、著作権違反 になりうる。
……と述べてきたものの、先の記事で述べたように、 (特に配信者に関しては) 「切り抜きしてね」「スクショ拡散してね」 等と推奨するケースも多い。
また、 「著作権違反の例外」 に当たるならセーフなケースもある。 このことについては、次章で見ていくことにしよう。
- 調査(5): 著作権の例外