「魔女の家」考察(4):魔女の家の仕掛け・住民について

目次

仕掛けと住民の可視性・不可視性について

  • 仕掛けとはヴィオラ(エ)の魔法で生成されたもの。
  • 住民とは、悪魔が食べた魂の残滓か、エレンに住民と言及されているもの。
  • 仕掛けはすべて見ることができる(以下、意思がありそうなもののみ)。
    • 1F: テディベア
    • 2F: 蜘蛛、金色の蝶、頭蓋骨、資料室(?)の女性の絵画、猫の絵画、鎧
    • 3F: 蛙、蛇、鏡合わせの部屋の女性の絵画
    • 4F: 兵隊の人形、4枚の女性の絵画、びっくり箱、ピアノ、指輪を求める女性像
    • 5F: 巨大頭蓋骨、おたまじゃくし、白い花、黄色い花、赤い巨大目玉
    • 階を問わず存在する石膏像
  • 時計は動くが、例外と思われる。
    • エレンは時計の存在を掴めないとされている。
    • つまり、ヴィオラ(エ)が生成したのではなく、元々家にあったもの。
  • 住民の一部は悪魔の食べた魂の残滓で、魔女のときのエレンは見れたが、ヴィオラの身体=人間では見えない。
    • 1F のコック
    • 2F の図書館の笑う椅子
    • 2F の本の少年
    • 4F のピアノの聴衆
    • 5F の小鳥
    • 5F の牢屋の男性
    • 5F の牢屋の女性(ただし音だけ)
  • 見える住民もいる。
    • 5F の赤い草: エレンが家に来た当初からいる。
    • 5F の老樹: エレンが家に来た当初からいる(ただし話せたかは不明)。
  • 以上の分類から、以下のような区別ができる。
    • (人間には)不可視なもの: 悪魔が食べた魂の残滓。
    • (人間でも)可視なもの: 仕掛け、黒猫が用意したもの、エレンの記憶由来のもの。
  • この中で異質なのは、石膏像、 2F のコック、 4F の指輪を求める女性像、 5F の小鳥。
    • 以降の節で考察。
  • 仕掛けの由来は大体が不明だが、エレンの人殺しの雑多な記憶から生成されたものと考えるのが自然。
    • 一部言及されているものや、由来が明らかなものもあるが、そうでないものも多い。
    • 単純に、作者もそこまで考えていない(少なくとも詳細には詰めていない)可能性が高い。

石膏像について

  • 石膏像は、小説でエレンが言及した「食堂のテーブルを囲む手のない住民」かもしれない。
  • ただ、文脈的にはこれはエレン魔女化後の魂の残滓なので、エレン(ヴ)=人間には見えないはず。
  • とはいえ、小説で言及が無かっただけで、最初からいた可能性もある。
  • また、ゲーム中の石膏像には足も無いので、そもそも別の存在かもしれない。

コックについて

  • コックについては、「先代魔女が置いていった」と黒猫が話すが、魂の残滓か否かは言及されていない。
  • ただ、不可視ということから、コックも魂の残滓と予想される。
  • コックはエレンが家に来たときからいるので、エレン以前に食べられた人間ということになる。
    • つまり、先代魔女がコックだった人間を殺した上で、その魂の残滓をコックとして使っていた。
  • 逆に言うと、先代魔女が人間(あるいは特殊な生物)を捕まえてきてそのまま使っているとかではない。
    • あるいは、人間に魔法をかけてずっと使っているとかでもない。
  • ちなみに、家に最初に来た少年は、コックのことは普通の人間(瀟洒な使用人)のように見えていた。
    • 魔女の家の魔法で、人間に都合のいい姿に見せることは可能(エレンには本体が見える)。

女性像について

  • 女性像については、エレンの母親と想像される。
    • しかし、そうだとすると、なぜ不可視の存在ではないのか。
    • また、 5F の牢屋の女性と合わせて2回登場することになる。
      • 2回登場してもおかしくはないが、他の解釈もできそう。
  • 女性像関連の出来事を整理する。
    • 女性像は「私の指輪がどこにもない」と言って指輪を探している。
      • 女性像を無視して先に進むと死ぬ。
    • これは「豚の指輪」で、台所のスープの中にあり、骸骨の山にある「金の箸」で取得する。
    • スープの入った鍋は熱く、スープは腐ったウインナーとキャベツが具で、豚の内臓が腐ったような匂いがする。
      • 熱い鍋の蓋を取るのにはギミックは特に無く、逆に、仕掛け以外の何らかの意味がありそう。
      • 最初に毒見をしろと言われる骸骨スープよりはまともそう。
    • 金の箸は人骨の肋骨に刺さっており、使用後は同じ場所に戻すことが求められる。
      • 同じ場所に返さなかった場合は死ぬ。
    • 女性像は指輪入手後にお礼を言う。
    • 次の部屋に進むと大きな音がし、戻ると像は真っ二つに割れて倒れており、割れ目からは血を流れている。
    • 更に女性像が倒れた後にエレンが部屋を出るとき、エレンを一瞬見上げるような動きをする。
  • 関連しそうな事実を整理する。
    • 「豚」という単語は、エレンの餌となる人間(家畜)を指す言葉として使われている。
      • また、豚(人間)の右手は薬を作るために必要であり、エレンがコックに集めさせていた。
      • そういう視点でいうと、「豚の指輪」は人間の指輪と考えられる。
      • 「豚の内臓が腐った匂い」も、人間の内臓が腐った匂いということになる。
    • 全体を通じて「肋骨」が登場するのは、(小説で)エレンが黒猫を刺した部位としてだけ。
      • このとき、エレンは魔法が解けた体を見て、自分の姿が見せかけという事実を黒猫から突きつけられた。
      • 同時に、エレンは自分の望みを自覚させられ、「病気を治す魔法を教える」と言われた。
    • 骸骨の山は、エレンが食べた(あるいは魔女の家が食べてきた)大量の人間の死骸の象徴として言及される。
    • 全体を通じて「指輪」という存在は小登場しない(身なりが整ったエレンの母親も着けていない)。
  • 以下、かなり飛躍も含む想像(こじつけ)。
    • まず、各アイテムが何と対応するかを考える。
      • 女性像は整った身なりをした(エレンを見放したときの)エレンの母。
      • 金の箸は、エレン(瞳の色が対応)、もしくは、エレンが人を食べる行為の象徴。
      • 箸が刺さった骸骨は、黒猫(悪魔の姿が対応)。箸が刺さっているのはエレンが刺したナイフの象徴。
      • 熱い鍋は、病気で熱を持つエレンで、蓋(見せかけの魔法)がされている。
      • 腐った熱いスープは、病気のエレンの本当の(腐ったように醜い)姿。
      • 豚(人間)の指輪は、(黒猫に唆されるまでは残っていた)人間としてのエレンの愛情。
    • 次に、一連のイベントの意味を想像する。
      • エレンを見放した母親は、エレンからの愛情を亡くしていた。
      • キッチンには、自然な愛情を残しつつも、病気の体を見せかけの魔法で隠したエレンがいる。
      • 見せかけの魔法を解くと、そこには病気で熱を持ったエレンの本当の体が見える。
      • 見せかけの魔法が解かれて激怒したエレンは、黒猫の肋骨を貫いた。
      • このときから、エレンは魔女になり、悪魔は人を食べるようになった。
      • 魔女としてのエレンは、人間としてのエレンの内面から自然な愛情を失う。
      • その後、魔女としてのエレンは、元いた場所(悪魔の元)に戻る(魔女と悪魔の密な関係を続ける)。
      • 母親は(事実に反して)エレンの愛情を取り返し、お礼を言う。
      • しかし、それはただの理想、夢物語であり、エレンに殺された現実に引き戻される(=死ぬ)。
      • 最後に、母親の残った愛情(というよりは憐情)から、エレンに手を差し伸べようとする。
    • 女性像が不可視ではないのは、魂の記憶の残滓ではなく、記憶から作られた仕掛けだから。
      • 実際、女性像は断片的な記憶(というよりは自我?)しか持ってないように見える。

見えない小鳥について

  • 5F の小鳥については、不可視だが、魂の残滓だとすると何由来なのか分からない。
    • 他の不可視存在は人間の形だが、小鳥だけは人の姿でもなく、由来も不明(他はエレンからの言及がある)。
    • しかし、「エレン(ヴ)の目には見えない」という魂の残滓に特有の性質を持つ。
  • 小鳥に関する事実を整理する。
    • 5F の監獄の部屋にいる。
      • ここにはエレンの両親の魂の残滓がある。
      • また、黒猫に追いやられた赤い草がある。
    • 最初は、金属製の籠の中で力なく羽ばたいている。
    • エレンの父親の残滓が牢屋を叩くショック、もしくはロープを燃やすことで籠から出る。
    • 5F の老樹の部屋上部には「みどりは とりがたべる」という張り紙がある。
    • 実際、小鳥は緑(5F 上部の緑のツタ、または、緑の蝋燭)を食べると、元気になる。
      • 更に、Extra では、ヴィオラ(の緑の瞳)をつつこうとする。
    • 森の鳥は、エレンに人間の到着を伝える役目を持っていた。
    • エレンは森の鳥の言葉が分かっていた(ヴィオラの身体になったときには分からなくなった)。
  • 安直に考えると、小鳥もヴィオラ(エ)の作った仕掛けである。
    • 魂の残滓に似せる意図があったか否かは不明だが、ともかく目に見えない小鳥を作った。
  • 想像を深めると、小鳥はエレンの象徴であるという可能性が考えられる。
    • 小鳥はエレンの両親の魂の残滓がある部屋におり、エレンとの強い関連性を示している。
    • 最初は籠の中で弱っているが、これは路地裏の家の中で病気だったエレンの暗喩である。
      • 路地裏の家ではなく魔女の家を指すとも考えられる。
    • 緑を食べると元気になるのは、ヴィオラの身体を得ることでエレンの病気が治るになることの暗喩である。
    • こじつけだが、小鳥とエレンの役割は似通っており、その共通点から小鳥の姿を取った。
      • 小鳥は人間というエサの存在をエレンに伝える役目を持っていた。
      • エレンは魂というエサの存在をを悪魔に伝える(捧げる)役目を持っていた。
  • 小鳥がエレンの魂の残滓と考えた場合、それが何を意味するかは解釈の余地がある。
    • 解釈1: 悪魔はエレンの魂を(少なくとも部分的に)食べていた。
      • 例えば、悪魔は人間が魔女になったときに、その人間の魂を一部食べることができるのかもしれない。
      • あるいは「魔女の家に取り込む」ということ自体が、エレンを食べたことを意味するのかもしれない。
    • 解釈2: 傷ついたエレンの心(魂)の一部が魔女の家に漏れ出てて、それを悪魔が食べた。
      • エレンは長剣の男の一件の後、「私の魂は削られたのではないか」という主旨の言葉を述べている。
      • 比喩ではなく本当に削られたのだとしたら、それを悪魔が食べた可能性がある。
    • 解釈3: エレンではなく、絶望しつつあるヴィオラ(エ)の魂が漏れ出た。
      • 上述と同様、絶望すると魂が削られる可能性がある。
      • 特にヴィオラ(エ)の絶望は大きく、削れた魂を悪魔が食べた。
        • 悪魔経由ではなく、削れた魂が小鳥として直接顕現した可能性もある。
      • ただ、ヴィオラが絶望して削れるのはヴィオラの魂のはず。
        • 小鳥の象意は明らかにエレン目線なので、小鳥がヴィオラの魂起源と考えるのは不自然。

シンデレラ要素

  • 意味があるかは不明だが、 4F と 5F の要素や仕掛けはシンデレラを連想させる。
    • (物語全体を通じて)魔女、魔法。
    • 4F のカボチャ(カボチャの馬車)。
    • 4F の王様と女王のネジ、兵隊の人形(舞踏会の王族や兵士)。
    • 4F/5F の柱時計(零時を告げる時計)。
    • 5F のガラスの靴(シンデレラと王子を結びつけるもの)。
  • 更にこじつければ、以下の要素も関連しうる。
    • 4F の暖炉(シンデレラ=灰かぶりからの連想)。
    • 4F のピアノ(舞踏会の演奏)。
    • 5F の白い花(シンデレラ自身の象徴)。
    • 5F の黄色い花(シンデレラを妬む姉妹)。
    • 5F の小鳥(グリム童話版でシンデレラを助ける存在)。
  • 特に靴について、なぜ母が履いていた「白い靴」ではなく「ガラスの靴」だったのか、という謎と整合する。
    • しかも、ガラスの靴はエレン(ヴ)を毒沼から守る存在である。
    • 視点を変えてみると、ガラスの靴はエレン(ヴ)とヴィオラ(エ)を結びつける役割を果たす。
      • ガラスの靴を履くエレン(ヴ)と、エレンを幸せにする王子様のヴィオラ(エ)。
  • ただ、(シンデレラの物語の中心人物である)王子役らしき要素は見当たらない。
    • 唯一あるとすれば、 3F の蛙?(蛙の王子様的に)
  • また、ゲームの展開的には、シンデレラは殺され、姉妹達が高笑いする結果で終わることになる。
  • 仮にシンデレラ要素に意味があるとすれば、その起源は何か?
    • 解釈1: 単にエレンが悪魔に捧げた魂の残滓が偶然そういう組み合わせになった。
    • 解釈2: ヴィオラの知識起源(ヴィオラはエレンを「お姫様」等と言うメルヘンなところがあった)。
    • 解釈3: 過去に家に住んでいた魔女との関連(何なら過去の魔女の中にシンデレラがいた)。
  • いずれにせよ、連想されるというだけで、あまり真剣に考える必要は無さそう。
  • 子供をさらって食べる魔女という観点では、どちらかというとヘンゼルとグレーテルの方が近いかもしれない。
    • ゲーム中の仕掛けで関連する要素は思いつかないが。